Return of the Obra Dinn感想。過去を視て、今考えよ。

今回紹介するのは Return of the Obra Dinn です。

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オブラ・ディン号の悲劇を辿れ

Return of the Obra Dinnは、多くの乗客が犠牲となり難破船となったオブラ・ディン号で何が起きたかを推理していくアドベンチャーゲームだ。
舞台は19世紀。主人公は東インド会社の主任調査官として、消息を絶ってから4年となり発見されたオブラ・ディン号の調査をすることになった。
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オブラ・ディン号へと向かうボートの中、調査の依頼人から渡された謎のアタッシェケースを開くとそこには髑髏のマークがついた懐中時計とほとんどが白紙の本が入っていた。
依頼人によるとその本はオブラ・ディン号でなにが起きたかを記すことになるものであり、章目次、名簿、乗員のスケッチのみの状態から埋めてほしいとのことだ。
懐中時計もその助けになるものである。こうして主人公はオブラ・ディン号で起こった惨劇を調査していくこととなる。

過去を視て、更に過去を探る

Return of the Obra Dinは上記したように推理もののアドベンチャーゲームである。
乗員計60名がどのような結末をたどったかを調べ、本を埋めていく。じゃあどのように推理していくかだ。
それには渡された懐中時計が役に立つ。この懐中時計はオブラ・ディン号内でいくつか見つかる白骨化した遺体や痕跡から、過去を視ることができる。
この「過去」は、乗員の中で1名「死亡した瞬間のシーン」を視るというものだ。そのシーンを見てその人間は誰か、死因は何かを探っていく。
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更にそのシーンから死体などが見つかったら、そこからさらに過去にジャンプができる。こういった過去視の連鎖で調査を深く進められることもできる。
しかし、このゲームは乗員60人の名前と安否をすべて調査することになる。そうなると当然、全ての人員に対して明確な死亡シーンや名前を描写しているシーンの方が少ない。
なので乗員の中には「この乗員は国籍的にこの名前、死因はこうだな」と考える必要も出てくる。
下手したら名前どころか碌なシーン描写すらされない乗員も出てくるので、プレイしてみて非常に考えることの多いゲームだと感じた。
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乗員の詳細がわかったら本に名前と死因(他殺の場合は殺した人間も)入れるわけだが、3人ずつ正確な乗員の情報を入れた場合、「調査が進展した」と判断される。
こうなるとゲーム側から「正確な情報」と判定される。この仕様は個人的に良いと感じた。
1人ずつ正確だと判定されるとあまり難しいと思えなくなってしまうし、かといって60人全部推測しきってじゃあ最後で答え合わせ!はあまりにも難しすぎるからだ。
そのうえでこの3人正確な情報なら進展したと判定されるという仕様はちょうどいい塩梅だと思った。
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また、この本は各章ごとに話があり、最初の過去視はなんと終章から始まるようになっている。
なぜこういった結末となったのか。その原因を探るため、今は難破船となったオブラ・ディン号を調べていく。

システム的なお話

過去視システムは斬新でかつ面白いと思わせてくれるシステムだ。
過去視した時の死亡シーンの演出も非常に凝っている。ちょうど一時停止したワンシーンと、そのワンシーンまでの台詞を見せてくれるのだがそれ以外のヒントはそのシーンで動き回れる範囲で自分で見つけろという仕様だ。
一方で、この過去視は連鎖的に発生するので1回だけ見ても忘れてしまうことが多い。
なので必然的に確認のために複数回見なければならない。だが1回みた過去視は本からもう1度間単に見ることはできず、再度遺体や痕跡のもとにいって過去視しなければならない。
このあたりは多少不便だと感じた。
乗員の名前がわかるとじゃあこの乗員を殺したのはこのひとだな、とシーンによっては分かるわけだが、そのシーンを見るために本を見直すだけでは分からない場合がある。
なのでシーンを見直す必要があるわけだ。ここらへんは演出との兼ね合いもあるのだろうが、もう少しどうにかならなかったかなと思った。
f:id:pado2donpan:20181125153158p:plain また、そのシーンを見直すために何度も何度も船の中を動き回るので、ダッシュ位ほしかったなと思うこともあった。
まあ船はそこまで広くないのでここらへんは許容範囲だが、過去視の見直しをしたいときを考慮して、ダッシュがあるか本でシーン見直しのどっちかはやってほしかったと思ってしまった。
画面が独特な描写のため、たまに死因がはっきり描写されてるけどいや、死因どれだよ!みたいなことにもなったりするので(特に4章の爺お前だよ!)ここらへんは難しいところだ。
死因が分かりにくいようなシーンだったら最悪勘でいくのも一つの手だろう。

オブラ・ディン号内のお話

ネタバレになるのであまり言わないが、オブラ・ディン号で起こる惨劇の一部は人的な問題以外で起こることも多い。
プレイした人ならわかるだろうが、筆者は「この手のジャンル」はあまりよく分からないしそういう方向に進むのは、最後まで調べ終わって真相がなんとなく分かった今なら理解できるが、プレイ中はなんでこんなごちゃ混ぜなことに…と思わざるを得なかった。
一方で人間同士のいざこざのみで60人の結末を描き切るのは流石に困難だろうし(というかこの手のを織り交ぜても60人描き切ったのはすごいと思うが)、味気なくなる恐れもありそうなので、結果的に正解だったのかもしれない。
それに、人間関係のいざこざだけならオブラ・ディン号が難破船と化してしまったという説得力にも欠けるからだ。
なので、この手のジャンルを混ぜるのはあまり好きでも嫌いでもないが、こういう風に舵を切ったのは正解なんじゃないだろうか。船の上の話だけに。
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最後に

Return of the Obra Dinはアドベンチャーゲームとして非常にプレイヤーにしっかり推理をさせてくれるゲームだ。
勿論時には推理ではなく勘で上手くいくときもある。こういった解き方も出来てしまうということは、ノンリニアでかつプレイヤーごとの体験談が独自のものになるので悪くはないと思っている。
また、調べ切ってもなおこれは結局どういうことだったんだろう、と考察の余地も残している。
そんなオブラ・ディン号を、どうかあなたも調査してみてはいかがだろうか。
死を忘るるなかれ。
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