『AI: ソムニウム ファイル』 レビュー。ノリがハマれば確かな物語とシステムとの調和に魅了されるADV。

1か月更新あいてしまったのふがいない……。
今回紹介するのはAI: ソムニウム ファイルです。

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物語の始まりは、とある遊園地にて起きた殺人事件

「AI: ソムニウムファイル」は主人公である刑事、伊達鍵(かなめ)を中心に進んでいく、推理もののADVゲームだ。
物語は現代日本の東京。ブルームパークという今ではとある事件を境に閉鎖された遊園地で死体が発見されたことから始まる。
死体からは左目がくり抜かれ、メリーゴーランドの馬に縛られていた。そして死体の身元は伊達の知人である灘海硝子であることがわかった。
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この死体現場を見た伊達の上司ことボスはこういう。「6年前の事件の模倣犯だ」と。
灘海が死んだ理由は?6年前の事件とは?それらを解き明かし、この事件の全貌をプレイヤーの手で明らかにしていこう。

ソムニウムで夢の中を捜査しろ

この「AI: ソムニウムファイル」にて大きな特徴といえば、このソムニウムシステムだ。
主人公・伊達が所属するABISという組織は、少々特殊な位置の警察部署だ。それは、Shync装置という機械を用いて他人の夢の中を覗き見て、つかみどころがなかったり迷宮入りしかけている事件の手がかりをつかむための特別な部署となっている。
他人と伊達がShyncすることで、その対象の夢を伊達は疑似体験する。その体験にはアイボゥというパートナーが代わりにつとめてくれることになる。
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アイボゥは、伊達の左目であり頼れる相棒であるAIだ。アイボゥは日常パートでもこのソムニウムパートでも手助けしてくれる。
そしてソムニウムパートでは、伊達の代わりにアイボゥを操作することで対象が事件当時なにをしていたのか、なにか隠していることがあるのか、そういったShync対象者が体験した記憶が表層化された夢を解き明かしていく。
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ではソムニウムパートでは具体的に何をしていくのか。対象の夢の中では断片化された記憶がオブジェクトや実際の人物となって現れることになる。
プレイヤーがそれらにインタラクトすると、選択肢が出てくる。例えば扉を選択すると「開ける」「タックルする」「調べる」といった風に出てくる。
それらの中で1つ選ぶと、アイボゥが実際に行動をしてくれる。そういった風に行動させていくことで、夢の中の調査を進めていく形となる。
ひとつ気にしなければならないのが、1つ1つの行動をとる際に起きる「時間消費」だ。
そもそもShyncには6分という制限時間があり、それを超えると元の肉体に精神が戻ってこれないという問題があるのだ。
そのため行動ひとつで何秒使用するのか、などと残り時間を考えて行動しなければならない。一方で行動するたび、たまに時間の消費を抑えたり固定の時間にしたりするアイテムが手に入る。
これを使うことで6分以内に調査を完了させるやり方を工面していこう。
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そして調査が完了すると、物語が進んでいく。なかには行動の仕方で物語が分岐することもあるため、こまめにセーブを…と言いたいが、実はこの「AI: ソムニウムファイル」は結構分岐だったり日常パートだったりのチェックポイントが事細かに配置されている。
そこまで気を張らずに調査していって何の問題もない。

日常パートのノリについてこい、伊達!

いやむしろ伊達が日常パートのノリの原動力になってるときもないか!?
という読んでる人が微妙な顔になりかねないノリツッコミはさておき、この「AI: ソムニウムファイル」では、非常に多くギャグが仕込まれている。
それこそオヤジギャグからよくわからないノリ、ミーム、ひいてはオマージュまで…あげればきりがないほどには仕込まれている。
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そんなノリがシリアスな状況になるまで続く。いや、シリアスな時もたまに仕込んでくる時がある。
故にこのゲームは「がっはっはなんじゃそりゃ~」と笑って受け入れる度量が多少は必要になってくることには注意だ。
とりあえず困ったらエロ本パワーで乗り切るのやめろ
逆に言えば完全にシリアスな局面ではそういうのを控えるので、そこは安心すべきと言えるだろう。

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流石に非暴力主義的暴力団は普通に笑ってしまった

ふたりのヒロイン

「AI: ソムニウムファイル」では2人のヒロインが重要な役割を占める。
それは先述したアイボゥと、もうひとりはネットアイドル「A-Set」ことあせとん、本名左岸イリスという人物だ。
最初の印象としてはちょっと「きつい」 くらいの子だったが、物語が進むにつれ慣れていくので問題ないだろう。
境遇や彼女の周り、彼女自身に起こる展開を知ればむしろ好きになっていくキャラでもある。
なによりなんだかんだかわいい。

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おとん、プラトン、あせとんちゃん!

そしてアイボゥだ。
この子は先述したように、伊達の左目だ。比喩ではなく、本当に義眼にチップなどを埋め込んで遠隔操作されているAIなのだ。
日常パートでの眼球スタイルもソムニウムパートでの人間スタイルのアイボゥもいい。
伊達との掛け合いも楽しく時にはどちらかがツッコミどちらかがボケと入れ替わるように行われ、非常に息の合ったコンビとなっている。
本編全てを通してこの2人の掛け合いも魅力のひとつであり、このアイボゥというキャラに魅力を感じられたのなら最後まで十分楽しめるゲームとなるだろう。
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ノリは人を選ぶものの、ADVとしての骨子はしっかりしている

「AI: ソムニウムファイル」はたしかに人を選ぶことは間違いないだろう。
しかし、推理ものとして、お話としては間違いなく面白かったと思える一品となっている。
ソムニウムパートというシステムもしっかりしていて物語とシステムの整合性が取れているという意味でも、評価点としてあげられるだろう。
そんなゲームを伊達とアイボゥと一緒にプレイしてみてはどうだろうか。
今回はこんなところで。