Fatal Twelve 感想。 死の運命を避けるため、今宵も選定が始まる。

今回紹介するのは Fatal Twelve です。

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物語のテーマは、死の運命からの解放

Fatal Twelve は、あいうえおカンパニーという同人サークルが手掛けた、ビジュアルノベル…まあ、選択肢分岐もあるので、フルボイスのADVといった方が差し支えないだろうか。
主人公、獅子舞凛火は「ライオン館」という喫茶店を祖母の代わりに店を任されている女子高生。ある日彼女は後輩の日辻直未とともに電車に乗って帰宅途中だった。
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その電車に乗った際、彼女達は車内での爆破テロに巻き込まれてしまい、凛火は直未を助けるために庇って命を落としてしまう。
……と思っていたのだが、凛火が次に目覚めたときは、その後輩の直未と、同級生である小熊真央と一緒にライオン館で話をしているところだった。
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あれは夢だったのだろうか、そう思いながら凛火は、直未、真央、そして同級生である未島海晴とともに遊園地に行ったりといつも通りの変わらない日々を過ごしていた。
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そして楽しい日曜日も終わり、凛火が眠りについた途端、そこで彼女は改めて知る。
あの爆破による死は夢ではなかったということ、「女神の選定」という死んだ人間の中で死の運命を変えることのできるゲームに組み込まれてしまったこと、そしてなぜか、その「女神の選定」に同級生である海晴もいたことだ。
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「女神の選定」を仕切るのはパルカという謎の少女。彼女の「女神の選定」についての説明は、動画でも紹介しているので見てみてほしい。
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そしてこれにより凛火を含めた12人は、毎週日曜日の夜に「選定」を行い、12週間以内に最後の1人になるためのゲームを進めていくことになる……

生き残るために進もうとする者と、留まる者

「選定」を進めていく上で大切なのは現実世界でいかに自分以外の11人の情報……上述されている動画にも説明しているように、「名前」「死因」「未練」の3つの情報を集めて指名…つまり「選定」からの脱落が可能になる。
この情報を集めていくうえで、いや、更にこのゲームにおいて「認知」というのは非常に重要なキーワードとなってくるため、いかにこれに気付けるかも「選定」で残るには重要だ。
しかしここで凛火は序盤、この「選定」の事実を知り――、前に進めずにいた。
筆者はここで「おい、そんなんで大丈夫かよ!」みたいな気持ちを凛火に向けていたのだが、そこで視点が「選定」に着実に取り組もうとする2人組に切り替わるのはありがたかった。
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筆者がこのゲームの2人以上で1回でも手を組んで何かしたグループならどれが好き?と言われたら迷わずオデット&フェデリーコと答えるだろう。
特にオデットはこのゲームにおいて予想以上に魅力的なキャラだ。
このキャラのおかげで話が大いに進むということも少なくなく、簡単に言えば「ずるい」キャラだ。しかしそれが許されるキャラでもあると言えるレベルで魅力はあると筆者は思っている。
さて、話を戻そう。
このように、主人公の凛火だけでなく「選定」の参加者にフォーカスが切り替わり、話は進んでいったりもする。
ときには情報を得るためならどういう方法を取るか―――、それとも「選定」で脱落するのを拒まないか。
そんなキャラの心情を12人(といってもほぼ11人みたいなものだが)と、あとは凛火の周りの直未や真央といったキャラをそれぞれ多かれ少なかれ書き上げている。
またキャラ同士の現実での情報集めの駆け引きも行われ、生き残ろうとするならばどんなこともやるという人間も当然現れる。
ここら辺については好感触で、よくできているなと思える点も多かった。
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また、主人公以外のキャラクターが「選定」を通して変わっていく姿もあり、そこもこのゲームの魅力のひとつだ。
最初の「選定」で脱落してしまうキャラだけはどうしても描写が少なくなってしまうのだが、それでもきっちりフォローをその後入れていたのも印象が良い。

ボイスアクトの是非

このゲームはフルボイスでキャラの台詞はそれに合ったボイスが流れる。
まあこの時代にわざわざ説明する必要があるのかという説明だが。
しかし、このフルボイスが良いところも疑問を浮かべるところも浮き彫りにする要素であったことはプレイした人ならよくわかるだろう。
ある特定のキャラは、ちょっと癖のある笑い方をするのだが、これがボイスの際にまあわざとらしい。
しかも同じ笑い方を同じキャラでするのであっても自然に聴こえたりなんかわざとらしかったりと全体的に安定はしてなくて「んん…?これはわざとこういう特徴づけのために言わせてるのかな、それともボイスアクターの問題?」と思ってしまうこともあった。
あとは単純に、なんか演技が(笑えるという意味ではなく)おかしくて気になるなと思う部分もあったりもした。
一方で、大事な場面ではきちんと声があることの良さを示している場面も少なくない。
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これはこのゲームがキャラの魅力をきちんと描写することに成功しているからだと筆者は思っている。
それは必死な声であったり、逆にやさしさの見せる声であったりと、「ああ、これはボイスなしじゃできない描き方だな」と思ったりもした。
つまるところ、このゲームはインディーゲームレベルで制作されたVN系ゲームにおいてフルボイスにすることの良いところとそうでないところ両方を持ち合わせている……というのは過言だろうか。
そんな印象を個人的には受けた。

システム

システムは大むね満足している。バックログのやり方はRenpy系ゲームに多少慣れていたため、それと似たような感じだったのですんなりいけた。
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一方で、個人的にはチャプター区切りスタート、要はn週目(進め終わったところまで)スタートが欲しかったなと思うことも。
あとは、ちょっとオートを最大にしてもちょっと遅いのが気になったくらいですかね。
それ以外は基本的な要素は兼ね備えていて問題ないと思いました。
でも、これネタバレになるのかどうか微妙なんですけど、エンディングでエンディング曲が一切ないのってかなり痛いなあと感じた。
バッドエンディングだとまだやってしまったという絶望感が増していいかもしれないんですけど、グッドエンディングでも一切変わらないのはいただけない。
そこはかなりマイナスポイントでした。
最後の最後までいけたんだから喜びもより一層味わわせてくれよと思ってしまいました。

【2018.4.13 UPDATE】
どうやらエンディング曲が流れないのはバグのようでした。
今ではアップデートによって修正されているため、問題ないです。

語りたいキャラが多すぎる問題

上述したように、このゲームは初期に脱落させられてしまうキャラを除くと、キャラ描写が丁寧だ。
なので、どういう魅力があるか書きたいキャラがそれなりにいるのだが…残念ながら公式で7週目以降ネタバレNG宣言が出てしまった。

とりあえずそれだけ語りたいキャラがいる、
ということだけはお伝えしたい!
特に海晴に関しては、軽くだが単体でかつネタバレ全開記事にするつもりだったのだが、仕方ないのでここで軽く説明したい。
海晴はデモをやっただけでも凛火に対する態度から「どういうキャラ」なのか、察しがつく人も少なくないのではないだろうか。
ここで海晴の直未に対する態度を序盤で見て、はっきりいってしまうけど私はこのキャラが好きじゃなかった。気にくわなかった。
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いくら「そういう」人でも、自分以外の人間に目を向けていた嫉妬で圧をかけたりするのは、嫌な意味で強烈で苦手だ。そういうのが第一印象だった。
そんな海晴だが、一方で高校では奨学金で学費免除になる程度に頭が良く、更には「選定」で他人との駆け引きがうまい秀才キャラとして描かれており、人間的な部分とは対照的に物語の進行を妨げない。
f:id:pado2donpan:20180408043408p:plain また、物語の核心部分に少なからず絡んでくるキャラクターとしても描かれており、徐々にどうして序盤でそういう描かれ方をしていたか…なども後半で色々わかるようになる。是非プレイして確かめてほしい。
多分一番キャラに対する評価が変動したキャラじゃないでしょうか。
今ではこのゲームでTOP5には入る好きなキャラだと思っている。
あとはフェデリーコもオデットも、勿論凛火も、あとじいさんとアランと……色々語りたいがここから先はプレイして自分の目で確かめてくれ!(某攻略本っぽく)
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そんなこんなで

Fatal Twelve は総合的に見ればかなり満足度の高いADVだったので、ぜひプレイしてみてほしいです。
デモ(体験版)もあるので、やってみて良いなと思えたら買ってみるのもいいんじゃないでしょうか。
そんな感じで終わらせていただきます。